教育改革のキーパーソンである校長をはじめスクールリーダーの資質力量を向上させることはいずれの自治体でも喫緊の検討課題です。しかし、その一方で教員の年齢構成が大きく変化し、次世代を担うミドル層の教員が手薄な状態が都市部を中心に全国的に広がっています。このため、指導主事などの行政経験、教務主任(主幹教諭)、教頭・副校長の職歴を十分踏まないまま校長に登用されるケースが予想されます。
ケースメソッド手法は葛藤(ディレンマ)場面の設定によって意思決定の機会を与えることに特長があります。ケース教材を通して、日本教育経営学会が校長会等と共同開発した「校長の専門職基準」に求められる7基準33項目に対応した多様なパターンのケースに遭遇し、ミドル層が管理職昇任以前の段階から判断する難しさを体感することにより、他者の意見に耳を傾け、柔軟な学校経営を行うリーダーを養成することができると考えます。
本プログラムでは、九州大学教育学部が連携協定にもとづき連携事業を積み重ねている福岡県教育センターを中核として、九州圏内各県の教育センター指導主事らと共同開発し、その可能性を探ることを目的としています。プログラムを通して地方における基幹大学と連携関係にある教育委員会・教育センターが保有しているそれぞれの知とネットワークを活用した連携のあり方のひとつのモデルを提示します。
本研究では、九州各県の指導主事に協力を仰ぎ、ケース教材を開発しました。ファシリテート部門(日本教育経営学会実践推進委員のメンバー)の協力をえながら、公募で各県から集まった約30名の受講者を対象にした3日間の集中的な研修会を実施しました。
本研修は、3つのステップで開発されています。第1段階として、研究代表者である元兼が講師を務める各県の管理職研修講座において、プレ演習を実施しました。その際に、校種や職位や地域などの属性による差異を比較検討し、ケース事例の効果性をさぐりました(5月~8月)。第2段階として、福岡県教育センターをはじめ九州圏内各県の教育センターからカリキュラム開発委員(指導主事)を募り、カリキュラム開発部門として共同でケース開発を行いました(5月~8月)。第3段階として、研修プログラムを実践する「ケースメソッド研修会」を実施しました。
第1段階
各県への研修を通して校種や職位や地域などの属性による差異を比較検討しました。
第2段階
持ち寄ったケース教材を検討しあうカリキュラム開発会議を実施しました(計7回)。その際、九州女子大学の川野司教授、慶應義塾大学の竹内伸一特任准教授、大阪教育大学の大脇康弘教授による情報提供及びアドバイスをいただきました。また、日本教育経営学会実践推進委員がオブザーバーとして関わっています。
第3段階
公募で各県から集まった約30名を対象にケースメソッド研修会を行いました。
以上、一連の研修を構想し、分析する拠り所として、日本教育経営学会が2009年に作成し、2012年に改訂した「校長の専門職基準(一部修正版)」(http://jasea.sakura.ne.jp/teigen/kijun/teigen2012.6.pdf)を参考にしました(上図は構成要素の概念図)。これを踏まえて試行を重ねながら何度も練り直し、本プログラム開発の研究成果と今後の課題を確認しました。
本プログラムは福岡県教育センターの担当者と、九州大学において学際的に組織したスタッフとで共同開発したものです(以下は申請書作成時)。
九州大学関係者
所属 | 氏名 | 専門 | 開発組織における役割 |
---|---|---|---|
人間環境学研究院 | 元兼 正浩 | 教育法制 | 事業代表者/統括・事務局長 |
田北 雅裕 | ユーザー感性学 | 研究分担者 | |
兵庫教育大学 | 浅野 良一 | 教育経営 | ファシリテート部門リーダー |
広島大学 | 曽余田 浩史 | 教育経営 | ファシリテータ |
福岡教育大学 | 大竹 晋吾 | 教育経営 | ファシリテータ |
福岡県教育センター | 荒牧 克之 | 連携窓口 | |
人間環境学府 | 金子 研太 | 教育法制 | 研究分担者/事務局員・HP統括者 |
波多江 俊介 | 教育法制 | 研究分担者:事務局員 | |
畑中 大路 | 教育経営 | 研究分担者:事務局員 | |
門 悟 | 教師教育 | 研究分担者 | |
兼安 章子 | 教師教育 | 研究分担者 | |
梁鎬錫 | 教育法制 | 研究分担者 | |
学術協力研究員 | 藤原直子 | 学校建築 | 研究分担者 |
企画会議協力者
企画会議では、現職の校長・教頭・教諭・大学事務職員ら多くの方にご協力いただきました。研修プログラムの開発にあたり、オブザーバーとして現場に即したご意見を頂戴しました。また、ケース開発にもご協力いただきました。
教育委員会関係者
所属 | 氏名 | 所属組織における役職 |
---|---|---|
福岡県教育センター | 清田 嘉治 | 所長 |
九州大学人間環境学研究院元兼研究室は、福岡県教育センターと共同で(独)教員研修センター委嘱事業の採択を受け、「ケースメソッド開発による次世代スクールリーダー養成の可能性」と題して平成25年度にモデルカリキュラムの開発を行いました。
本プログラムでは、近隣各県・政令市の指導主事などでカリキュラム開発部門を構成し、スクールリーダーの意思決定場面を反映させたケースメソッド教材を共同開発いたします。また、当事業のファシリテーターとして日本教育経営学会実践推進委員会を位置づけ、年末には開発した教材を用いた研修会を開催いたしました。
カリキュラム開発会議
・7月25日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(E+F室)
・8月 9日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(G+H室)
・9月24日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(G+H室)
・10月28日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(G+H室)
・11月25日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(G+H室)
・12月16日 13時~17時 JR博多シティ10階会議室(G+H室)
・1月20日 13時~17時 博多バスターミナル9階(第6ホール)
研修会
・12月25日~27日 九州大学箱崎文系地区 文・教育・人環研究棟2階会議室
カリキュラム開発会議および研修会についてのお問い合わせは、問い合わせフォームから事務局までご連絡ください。