学校や子どもたちを取り巻く環境の変化は著しく先行き不透明となっており、管理職の経営判断はますます重要かつ困難なものとなっています。管理職に求められる力量は長い教職経験だけでは事足りなくなっており、教員研修センター等での系統的な管理職研修の役割は大きくなることはあっても減じられるものではありません。とはいえ、校長・教頭ら管理職が学校現場を離れてセンター等でOff-JTを受けることは時間的、空間的、精神的に容易ではないこともまた事実です。都道府県単位の研修ではその移動コストも大きく、終日研修や宿泊研修も難しい状況にあります。そこで制約された時間枠の中で効果的な研修を行うための発想の転換が求められるでしょう。
例えば、座学の講義にあたる部分は可能な限りWebコンテンツやPDF化して事前学習を行うこととし、都道府県、政令市の管理職が一堂に会する研修の場では自律的・積極的に力量形成を図る演習(アクティブラーニング)型の研修とするといったスタイルです。本件事業はこうした管理職研修のための「反転授業」とアクティブラーニング研修をトライアルとして実践し、これを仕組んでいくためのプログラム開発を行うことを目的と致しました。
実際のコンテンツ開発にあたっては、人的、物的、財的資源の問題、著作権処理の問題、配信方法の問題など様々な壁にあたりましたが、その中でも危機管理をテーマにしたコンテンツ開発を行い、実際にカウンターパートナーである宮崎県教育研修センターの他、賛同いただいたいくつかの自治体でアクションリサーチ型の研修を行い、それなりの手ごたえを得ることができました。以下に掲載の成果報告をご覧頂けると幸いです。
次世代を担うスクールリーダのための研修体系や方法については多くの教育センターが模索されているようです。本プログラム開発研究がそうした事業改善の一助となることを願ってやみません。
九州大学大学院 教育学部門
教授 元兼正浩(研究代表者)
本プログラムでは管理職研修で実施率の高い組織マネジメント、リーダーシップ・ビジョン形成(戦略策定)、危機管理の3領域のうち危機管理に的を絞ったコンテンツ開発を行いました。
研修講座で使用されているコンテンツを可能な限り渉猟し、講師および受講生の許可のもとデジタルアーカイブをホームページ上にアップしております。
研修受講者は事前に本サイトにアクセスし、事前課題データをダウンロードしたり、パワポスライドを使って事前学習を行うことで当日の研修の準備をします。
連絡協議会(企画運営委員会)を開催するなかで適宜、軌道修正を行いながら3つの段階を踏んでプログラムの開発を行いました。第1段階では、プログラム開発の全体構想をくみ、研修講座などで使用されているコンテンツを可能な限り渉猟しました。第2段階では、開発プログラムの要となる事前学習を行うための映像教材を作成し、開発したプログラムに基づいた研修を実施しました。第3段階では、研修の実施に伴って生じた課題点などを反映し、研修教材をウェブサイトからアクセス可能なよう整備しました。今後は当サイトを運用しつつ、さらなる研修プログラムの改善を行っていきます。
事前学習では、これまでの研修において講義形式を主体として行っていた部分を動画として配信し、研修当日の演習で活用する課題に取り組みます。
研修当日は、それぞれ取り組んだ事前課題を持ち寄り、受講者の勤務校で抱える課題について協議を行い、改善方策を出し合います。また、ロールプレイを通して実践的な危機対応の体験などを行います。
所属 | 氏名 | 担当役割 | 専門 |
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人間環境学研究院 | 元兼正浩 | 企画運営統括・研修講座実施 | 教育法制 |
田北雅裕 | カリキュラム開発部門(デジタルコンテンツ担当) | 教育デザイン | |
金子研太 | 連携窓口・カリキュラム開発担当 | 高等教育 | |
宮崎大学教職大学院 | 押田貴久 | 研修講座実施・企画運営委員 | 教育行政 |
宮崎県教育研修センター | 澤野幸司 | 連携窓口・企画運営委員 | 教育経営 |
兵庫教育大学大学院 | 浅野良一 | 企画運営委員 | 教育経営 |
人間環境学府 | 原北祥悟 | 事務局員 | 教育行政 |
木村栞太 | 事務局員 | 教育財政 |
本プログラムの開発にあたっては、図のような推進体制のもと取り組みを進めてまいりました。九州大学の人的資源(教育デザイン担当者、社会人院生ら)のみならず、オンライン資源(スクールリーダーシップ開発総合サイト)、関連組織(宮崎大学等)の各種資源による創発の中でブラッシュアップを行いました。連携先の宮崎県教育研修センターをはじめ、複数の研修において本研修プログラムを実践し、成果の検証と改善点の抽出を行いました。