九州大学スクールリーダーシップ開発総合サイト

Kyushu University
リスクの感度を高める
組織マネジメント
研究開発プロジェクト

平成29年度 
独立行政法人・教職員支援機構委託研究

研修について

本事業は、危機管理-とりわけ危機予防や危機予測といったリスクマネジメントの観点から組織全体の意識を高める研修プログラムの開発に取組むものであるが、リスクマネジメントは広義にはクライシスマネジメント(危機対応)も含み込む概念であるので、ミドル向けロールプレイ(役割演技)スクリプトなど危機場面の対応法についても本研究開発の視野に収めて推進した。 

昨年度(平成28年度)初めに起こった熊本地震では学校現場は手探りでクライシス対応を行っており、その知見を生かして日常的な身構えの必要性を洗い出していく(「失敗学」の視点などクライシスマネジメントの徹底から狭義のリスクマネジメントへの循環というサイクルの構築)。

また学校のリスクは地震や水害などの天災ばかりでなく、若手育成、不祥事案件、保護者対応、運動会や修学旅行などの学校行事、地域連携・協働などの様々な場面を想定したケースが考えられる。そこで平成28年度に開発したミドル向けケースメソッド事例とあわせ、研修コンテンツを開発し、多くの自治体で開発教材の試行的なトライアル研修を行ったり、実行組織メンバーの協力を得ながら、ニーズのある自治体へ「出前型」の研修も実施したりする。

なお、本プログラムは主としてミドル層の教員を対象としているが、ミドル概念も柔軟に捉えている。「チームとしての学校」論を踏まえ、新しい職や主任・主事ばかりでなく、学校事務職員らノンティーチングスタッフも視野に入れた汎用性のある研修プログラムの開発を志向している。

研修プログラム開発の目的・方法・組織

1.開発目的

本事業は平成28年度からの延長線上に位置づいている。平成28年度の事業では、管理職向けにケースメソッド研修を実施している熊本市教育センターとの共同としてミドル向けケースメソッド教材の開発をすすめ、そこに広島市、小郡市、宮崎県などの協力も得て20以上のケースを作成し、トライアルを行い、その成果をまとめた(関連ホームページなど参照)。熊本市教委との共催事業ということもあるが、平成28年度は熊本地震のインパクトを抜きに語れず、危機管理(クライシス・マネジメント)のケースも増やした。その際、判断や意思決定が重視される管理職と異なりミドル向け研修ではより事前のリスク予測の視点が重要となる。そこで、平成29年度の本事業開発目的を組織構成員全体の「リスクの感度」を高めるリスク・マネジメント研修のためのプログラム開発とした。そこで熊本地震をはじめ福岡・朝倉市の大水害や宮城県・石巻市などの被災地をできるだけ直接訪問し、リアリティのある中で調査研究開発を進めていくこととした。また、防災ゲームなどの実際にも触れ、プログラム開発に資するアイディアを集める。被災地や先進事例に学び、想定外の危機を想定するためにはどのような構えが必要かを情報収集・検討し、その成果を組織マネジメント研修のプログラムの一つとして提案することが本事業の目的である。

開発目的図

2.開発の方法

本年度の事業は、①リスクマネジメントプログラム開発のための調査研究と②作成コンテンツの試行と検証作業に分けられる。

まず①については熊本市の所管学校、教育施設を中心にフィールド調査を実施し、九州大学大学院人間環境学研究院(教育学部門(研究代表者は部門長)、人間科学部門、都市・建築学部門)で培ってきた震災対応や安全・安心プロジェクトや危機管理に対する学際的・学術的な知見を活用し、プログラム開発を行った。特に被災地訪問などは今回のプログラム開発では不可欠な作業となる。そこで起きた危機は多様であるものの、それらに通底する危機に対する構えを導いていくことが本研究の狙いである。また、昨年度来のケースメソッドの蓄積もホームページ等で発信するなどして、下半期の調査研究活動の前提を構築あいた。そこには共同研究者または連携研究者として九州教育学会(研究代表者は事務局長)や九州教育経営学会(同、理事)などから人材を集め、リサーチと共にプログラム開発づくりをおこなう。

②プレ研修はじめ全国の組織マネジメント研修の際に、開発したプログラムの一部を演習形式で織り込み、ワークシートやロールプレイ用スクリプトの使い勝手を確認する。運営委員の先生方には各自の経験知に加え、改めて調査研究をしていただきスクリプトを作成いただいた。その協議のための開発会議の場を複数回設けて、スクリプトの精度を高める努力を行った。

また広島市、小郡市、宮崎県など関係自治体のほか研修ニーズのある自治体や団体を募り、反転学習や事前にケースを読んで回答を作成していただき、そのうえで上記の共同研究者や連携研究者が当地に赴き、研修を実施することとした。研修補助者として院生も同行し、記録化したり、効果測定のためのアンケートを実施したりして、プログラム開発の成果をさぐる。

最終的に、こうして開発した情報を九州大学スクールリーダーシップ開発総合サイトの中に新規に作成するHP等として発信したり、学会ラウンドテーブルや研究会等で報告したりして、できるだけ知見を全国に広げて、活用してもらうためのコンテンツ作りを目指す。

3.開発組織

所属・職名氏名担当・役割備考
九州大学大学院・教授 元兼正浩 企画運営統括・研修講座実施 教育行政学
九州大学大学院・助教 兼安章子 カリキュラム開発部門・事務局長 教師教育論
長崎大学・准教授 畑中大路 ミドルリーダー研究・理論構築・カリキュラム開発担当 学校経営学
福岡教育大学・教授 大竹晋吾 研修講座実施・企画運営委員 教育経営学
熊本学園大学・講師 波多江俊介 研修講座実施・カリキュラム開発委員・熊本市との連携窓口 教育組織論
大分大学・講師 清水良彦 カリキュラム開発委員 教育方法学
熊本市教育センター・研修・研究班担当指導主事 岩野智典 カリキュラム開発部門・共同申請機関・連携窓口  
広島市教育センター・指導主事 大上 隆之 カリキュラム開発委員・連携窓口  
広島市教育センター・指導主事 福原 宏 カリキュラム開発委員・連携窓口  
小郡市教育委員会・指導主事 小田 哲也 カリキュラム開発委員・連携窓口  
宮崎県教育研修センター・指導主事 藤岡 博 カリキュラム開発委員・連携窓口  
九州大学大学院人間環境学府 小林 昇光 事務局員・研究補助者 教育行政学
原北 祥悟 事務局員・研究補助者 教育行政学
申 芸花 事務局員・研究補助者 比較教育学
木村 栞太 事務局員・研究補助者 教育行政学
鄭 修娟 事務局員・研究補助者 教育行政学