山城中学校は、1学年3~4学級、特別支援教室2学級、全校生徒407人の学校である。職員は30名である。子どもは、一時期、荒れていたが落ち着きを取り戻しつつある。
木戸昇先生は、本校3年目、29歳の教諭である。4月、2年間研究主任を務めた佐々木教諭が異動となり、木戸教諭が研究主任に任命された。50代、20代の教師が多く、30代、40代の教師は少なかった。中堅の教師はいたが、講師や、育休明けの教師や木戸よりも採用年次が遅い教員で、木戸先生の任命は、仕方がないものと考えられた。新しく来た新任校長石田は、荒れた学校を立て直した教師たちを評価していたが、生徒指導中心の学校経営には、疑問を抱いており、学力向上を目指した校内研修の充実を1つの柱として掲げ、全職員の授業研究を実施することを木戸に求めた。これまでの山城中学校では、校内での授業公開は、生徒指導の観点からも自習などが難しく、行っていなかった。
石田校長の思いを受け、木戸先生は、その具現化のために動き出し、学期に1回の校内研修で、3回ですべての教師が、公開授業をすることができるように、研修計画に組み込んだ。
1回目は、市の指導主事が訪問する6月の日程である。これは、毎年、指導案の提出も求められており、時間割上、訪問の時間帯に授業する教師は作成を求められていたので、それほど抵抗なく、校内研修と抱き合わせることに異論はなかった。問題は、2学期と3学期だった。文化祭の準備で忙しくなる10・11月、成績処理や進路業務の12月をさけ、9月に行うのが無難と考えた。また、3学期は新一年のための授業参観が行われる2月に設定し、3年担当は避け、1・2年担当が、参観とともに授業研とすることとした。
これらの案は職員会議にかけられた。生徒指導担当の太田先生は、公開授業の際に、他のクラスが自習になることに対する懸念の声をあげた。公開する授業クラスや教科を工夫し、自習となる教室に近い場所で授業を行えるようにすることを提案し、その場はなんとかおさめることができた。また、指導案の形式について、吉田先生から、正式な形で書くのは負担が大きいという意見が出され、複数の教員が大きく頷いた。形式は、研究部で、検討して提案することとなった。会議の雰囲気から、木戸は、校内研修に対する後ろ向きである教員がいることを、感じずには、いられなかった。ただ、校長の授業前・授業後も含め、形骸化した研修を復活させてほしいとの願いも理解できた。研修の時間帯や、授業の時間割については、協力するよと、教務主任が、声をかけてくれ、少し安心した。
夏休みに指導案を作成してもらい、9月の授業に向け、研修時間を設定し、小グループでの指導案検討を行った。夏休みということもあり、緩やかな時間が流れていった。
9月の校内研修日の前日、昼休みに緊急の職員集合となった。台風接近に伴い、明日は、全市一斉に休校の措置がとられたとのことだった。
校長から、「校内研修の対応は、君に任せる」と言われ、校内研修については、木戸先生が追って職員に連絡することとなった。教務主任に確認したところ、翌日に授業をスライドさせることは、出張の関係から難しいようだ。翌週には、中間考査もある。校内研修をどうしようか。木戸は頭を悩ませた。
問1.あなたが研究主任なら、この事態にどのように対応し、校内研究をより充実したものにしますか。
問2.あなたが、研究主任なら、どのような研修計画を立てますか。