研修開発

ケースメソッド教材

オレは『チーム学校』の一員じゃないんですね!

 4月は学校の新しいスタートの時期である。職員会の学校経営方針において、3年目を迎える丸井校長は「目指すべきは『チーム学校』です。全教職員が力を合わせ、子供たちを成長させましょう」と力強く話した。
 この体制は昨年度より推進され、具体的なチームの活動は、「学習(各学年教員)」「健康(保健室・給食室)」「支援(特別支援・授業ボランティア)」「環境(事務室・学校用務員)」の4つのチームから構成されている。なお、2年目を迎える横手教頭、小島主幹教諭が教職員40名の指導・助言・調整に関わっている。


 第一小学校は創立70年を迎える400名程度の中規模校である。祭りや行事を通して地域と学校の関
わりは深く、PTAや地域のボランティアなど学校へも協力的である。
 5月末は学校の一大行事である「運動会」を迎えた。各チームとも、運動会の成功に向けて、子どもの指導や用具の確認、学校敷地内の安全点検、地域・来賓への接待準備など、チームごとに順調に物事を進め、運動会は成功に終わった。教職員の反省会やアンケート用紙でも「先生たちみんなで協力できて成功できた」「チームに助けてもらった」など、2年目にして「チーム学校」としての意識が教職員に見られるようになったと丸井校長、横手教頭、小島主幹教諭は感じていた。


 6月に入り、PTAの松尾広報委員長が学校にたずねてきた。例年通りの運動会の子どもの様子とともに、特集号として「チーム学校」の様子や先生方の頑張りやエピソードを掲載したいという。そこで横手教頭が対応し、丸井校長に快諾を得た上で、チームや教職員の動きをよく知っている小島主幹教諭がこの広報誌特集号の担当となった。
 小島主幹教諭は各チームを周り、内容と期限を書いた紙面を見せながら口頭で要旨を伝えた。2回のPTA広報誌編成会議にも立ち会い、順調に誌面は完成に向かっていった。
 横手教頭の掲載記事の内容確認と掲載教職員氏名の誤字の確認を終え、最後に丸井校長が記事全体の偏りや使用語句の適切さを確認した上でPTA広報誌は決済を終えた。そしていよいよ発行当日を迎えた。


 職員室や事務室では配付されたばかりのPTA広報誌が、全教職員の机上に置かれていた。記事を読んだり、お互いに写真の様子を笑顔で話し合ったりと和やかな雰囲気が流れていた。
 その姿を見ながら丸井校長が校長室へ帰ると、広報誌を握りしめた土井事務主査が血相を変えて怒鳴り込んできた。「校長先生、学校用務員の園田先生が『チーム環境』に入っていません。記事の内容も小島主幹教諭から直接聞いてないと話していました。写真も名前さえもないんですよ。『オレはチームの一員じゃないんですね!』というんです。あんなに運動会では陰で支えていたのに、なんのための特集号ですか。なにがチーム学校ですか。」と訴えた。

 

丸井校長はすぐに横手教頭を呼び、小島主幹教諭への指導と学校用務員の対応、職員や保護者への説明を検討した。

 

問1.あなたが主幹教諭ならば、広報誌特集号の依頼を受けた段階でどのように進めますか。
問2.この後、学校として誰が当事者、教職員、保護者にどのような対応と説明をすることが必要でしょうか。
問3.「チーム学校」として組織的に動くためには、教職員に対してどんな指導・助言・調整が主幹教諭に求められますか。