平成23年度九州大学全学教育改善・実施経費助成研究

コアセミナー（教育学部基礎セミナー）の取組評価と改善方策の検討

元兼正浩准教授を中心とした共同研究グループでは、九州大学全学教育改善・実施経費の助成を受け、「コアセミナー（教育学部基礎セミナー）の取組評価と改善方策の検討」と題し、以下のような研究を行っています。

コアセミナーの紹介および本研究の位置づけ

九州大学教育学部では、全学教育のカリキュラム改訂や学生の多様化に対応し、初年次教育科目として「コアセミナー（教育学基礎セミナー）」を開講しています。
「コアセミナー（教育学基礎セミナー）」では、ゼミ方式での少人数指導の実施や、複数名での分担型指導体制など、いくつかの授業改善方策の実施に取り組みました。
その結果、プログラム完成年度の2009年には、受講者全員から肯定的な授業評価を得るに至っています。

当初、ゆとり世代の学力低下問題（いわゆる「2006年問題」）への対応として構想された本科目ですが、高校までの学習スタイルからの転換を体得させる科目としての役割が大きく、実施形態を少しずつ変更しながら実施されています。

本年度は、九州大学の「全学教育改善・実施経費」の助成を受け、本科目の意義と課題について再整理する取り組みを行います。

本研究の構成

本研究は大きく３つの調査から構成されます。

受講者からのヒアリング

＜座談会の実施＞

各学年から６名の受講者を抽出し、コアセミナーでの体験と自己の学びに与えた影響についての語りを収集します。
実施者ならびに共同研究者がこのトランスクリプトを分析することで、「コアセミナー（教育学基礎セミナー）」の意義と課題を析出します。
また、大学で初めて受けた授業である「コアセミナー（教育学基礎セミナー）」を主題として自己の体験を振り返ることは、学生にとって、これからの履修計画や大学生活の在り方を考える契機ともなり、教育的効果をも見込むことができると考えられます。

＜受講者アンケートの実施＞

教育学部で行っている授業アンケートとは別に、受講者に対する詳細なアンケートを実施しました。とりわけ、プログラム完成年度の2009年度の受講者に対してはほぼ全員からの返答を得ています。
このアンケートは、受講者が求めているものや実際に得られたと考えるものについてのより客観的なデータとなります。

先進事例調査

関東地区をはじめとする他大学の初年次教育プログラムを視察し、「コアセミナー（教育学基礎セミナー）」への示唆を得ます。

初年次教育の実施状況に関する全国調査（「大学の教育研究組織についての調査」との連動）

部局を超えた取り組みに関する調査として企画された「大学の教育研究組織についての調査」と連動し、他大学での初年次教育に対する取り組み状況を収集します。

初年次教育プログラムは、専門科目を履修する以前に行われるものであるため、必然的に学生の体験は教育学部外の活動対しても大きな比重を持ちます。そのため、学生の意識やその変容をよりよく理解し、促進するためにも、部局横断型の取り組みが欠かせません。

本調査では、部局間連携による教育プログラムの可能性を模索するために、「部局等を超えて学際的研究を進めるセンター等」のマネジメントを調査する「大学の教育研究組織についての調査」と連動して、他大学の取り組み状況を調査します。
なお、この調査については特設サイトを設けております。

共同研究構成員

研究チームは、以下の４名により構成されています。

元兼正浩	九州大学大学院人間環境学研究院准教授　※コアセミナー実施計画者

岡　幸江	九州大学大学院人間環境学研究院准教授　※2012年度授業担当者

金子研太	九州大学大学院人間環境学府博士後期課程

畑中大路	九州大学大学院人間環境学府博士後期課程

Q-Conference 2011における途中経過報告

2012年2月18日に開催されたQ-conference 2011では、「九州大学教育学部における初年次教育導入の取り組み ―コアセミナー（教育学部基礎セミナー）の展開と評価―」と題し、ポスター発表を行いました。
ポスターの前まで足をお運びくださいました参加者の方に御礼申し上げます。

本日いただいた貴重なご意見に加え、訪問調査で得られる知見を反映し、報告書にまとめさせていただきます。