「校長の専門職基準」準拠 ケースメソッド事例集

専門職基準に基づく校長の養成・採用・研修プログラムの開発に関する実証的研究

本取組の背景と意図

近年、都市部を中心に教員の年齢構成が大きく変化しています。ワイングラス型からふたこぶ型に移行し、中堅層の教員が極端に不足する事態が生じています。同世代はミドルとしての役割が期待されると同時に「次世代スクールリーダー」としての期待も背負わされていますが、日常業務に追われ十分な研修を受ける機会に恵まれているとはいえない状況があります。このため、教員の年齢構成上、教頭や主任等のキャリアパスを十分に経ないまま校長となるケースも予想されます。 近い将来の学校管理職として、十分にその力を発揮してもらうためにも、即戦力となりうる次世代スクールリーダーの養成は喫緊のテーマとなっています。

 

本事例集の開発

事例集の開発は、主に現職教員、学校管理職などを受講生とする九州大学の夜間大学院ゼミ「教育行政臨床論」において知見を得て行われました。また、福岡教育大学教職大学院の学校運営リーダーコース「学校の危機管理」のゼミでも一部にケース作りを行っています。

ケースは校長・副校長・指導主事ら現職教員を中心に作成し、作成したケースをメンバー全員が回答したうえで、ケース会議に参加し、実際にケースメソッドを行ったうえで、そのケース自体の吟味や設問の検討などを行いました。ケースメソッドを行うにあたって、科研メンバーによる『悠+』の連載記事や大阪教育大学SLP発行のSLF報告書により、関係する知見に対する理解を深めました。

 

 

ケースメソッド事例集のダウンロード

PDFには、ケースメソッド事例集のうち、ケース教材部分を収録しています。

 

ケース教材の利用にあたっては、137ページ(PDFの90ページ)の「ケース利用にあたってのお願い」を尊重いただきますようお願いいたします。

 

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日本教育新聞にて紹介!

2012年6月18日の「日本教育新聞」3面にて、本事例集が紹介されました。

紹介記事では、「課題解決の意思決定を疑似体験」という大見出しのもと、ケース内容が紹介されています。

 

日本教育新聞社より特別の許可を得て、紹介記事のスキャン原稿を掲載いたします。
新聞記事PDFファイルの著作権は日本教育新聞社に帰属します。また、記事、画像等の無断転載をお断りいたします。

 

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内容紹介

本書は、以下の14のケースで構成されています。各ケースは「校長の専門職基準[2009年版]」との対応関係を意識しながら作成されています。

 

CASE 1(基準1) 変えたい!でも、変えるには?
CASE 2(基準1) 佐々木校長、お願いしますよ ―教育ビジョンがはっきりしないと学校が混乱する話―
CASE 3(基準2) 西園校長の困惑
CASE 4(基準3) 人事異動は校務分掌の思惑を悩ませる!?
CASE 5(基準3) がんばれ、植月校長!
CASE 6(基準4) 行き過ぎた指導を保護者は見ている
CASE 7(基準4) 国際化は突然に・・・
CASE 8(基準4) マネジメントで学校が変わる!
CASE 9(基準4) 議員が学校にやってきた!?
CASE 10(基準4) それでも僕はやってない
CASE 11(基準5) 「開かれた学校」の裏では、… ~地域社会との協働・連携~
CASE 12(基準6) 不祥事発覚 ! 「マスコミ対応、残り4時間」
CASE 13(基準6) その時 あなたはどうします?
CASE 14(基準7) AKB小学校では、何が…

 

 

研究代表者より

この度、日本教育経営学会による「校長の専門職基準」に準拠した『ケースメソッド事例集』を作成しました。

この事例集は、「校長の専門職基準」とそれに基づくプログラムの開発を目的とした科学研究費共同研究(『専門職基準に基づく校長の養成・採用・研修プログラムの開発に関する実証的研究』:研究代表者 牛渡淳)の成果の一部としてまとめられたものです。

わが国の学校経営をめぐる近年の状況の中で、学校管理者には大幅な力量向上が求められています。また、自治体によっては、教員の年齢構成のアンバランスから、今後、深刻な管理職不足が起きる恐れも出ています。こうした中で、日本教育経営学会が開発した「校長の専門職基準」は、スクールリーダーとしての専門性の枠組みをわが国の学会レベルでは初めて示したものであり、これに基づいた養成・採用・研修プログラムの開発が待たれているところです。

本事例集は、本科研費研究の最初の報告書の別冊としてまとめたものです。自治体の教育センター等でも、近年は、参加型・問題解決的な研修の人気が高く、その具体的方法を模索する動きが起こっていますが、本報告書では、そのような新しい研修方法のひとつとしての「ケースメソッド」を実施するために役立つ多くの事例を開発しました。

さらに、本報告書の特徴は、こうしたケースメソッドの事例を、校長の専門職基準の視点から分析し、それとのかかわりで紹介していることです。こうした特徴を持つ事例集は、諸外国では見うけられますが、わが国では、初めての試みであると自負しております。管理職の養成・研修に携わっている方々が、この事例集を使用して効果的な管理職プログラムを進めていただければ幸いです。

最後に、本事例集を作成するにあたっては、本研究メンバーの一人である九州大学准教授元兼正浩氏を中心とするグループが事例開発にあたったことを申し添えておきます。

 

仙台白百合女子大学教授 牛渡淳