後期集中講義「教育経済学」(末冨芳先生)講義が行われました
2019年2月18日(月)~2月21日(木)、末冨芳先生(日本大学・教授)をお招きして、集中講義「教育経済学」を開講いただきました。
本講義では、「教育の経済」とは純粋なマーケットメカニズムで成立しているわけではない点を前提に、ただ費用対効果という枠組みだけでその諸相を問うのではなく、マクロ・メゾ・ミクロレベルの教育主体と客体の関係、また海外の事例や近年の政策文脈などを参考に、それが持つ複雑なメカニズムについて議論しました。
教育サービスの需要サイドは保護者と子どもであるものの、保護者と子どものサービスに対する好み(選好)は常に一致するわけではない点、また教育サービスの供給市場は、政府による様々な規制が作用しており、供給サイド(学校,塾)は様々なやり方によりサービスの受け手を選別する点など、教育は単なる商品の売買ではなく、サービスの需要サイド(生徒)と供給サイド(学校・教師)による共同生産財としての一面を持つことに関して考察し、具体的な問いを立てながら、みんなで議論しました。「教育は消費か投資か」「教育格差はどう解消するか」「教育の無償化政策をどう捉えるか」等の問題関心に基づいた議論とともに、「子どもの貧困政策」「給付型奨学金制度」をめぐる日本の財政制度の機能やその具体的な実践事例等も紹介していただき、これまで漠然と難しく感じてきた「教育経済学」を身近な例を通じて考えることができました。
さらに、教育学としての教育財政学・教育行政学のポジションについて「教育エビデンス」というキーワードを中心に問いなおし、政策レベルにおける議論だけでなく、学問として探究していくべきテーマや現実についても議論し、研究者のポジショナリティについても改めて自ら考える機会を得ました。
今回の集中講義を通じて、「教育の経済」は決して単純な構図を持つのではなく、ミクロ(家計,生徒,保護者)、メゾ(学校,地方政府),マクロ(市場,中央政府)に注目しながら理解する必要がある点、また今後ますます変化していくだろう教育消費の現実を冷静に評価することが教育学を研究していくうえで重要であることを感じました。
文責:鄭修娟