2019年9月14日(土)~9月16日(月)、佐古秀一先生(鳴門教育大学・理事)をお招きしての集中講義「学校改善の理論と実践」が開講されました。
佐古先生は、大阪大学大学院で過ごされた院生時代には、本学法文学部出身の三隅二不二先生(※1)に師事し、社会心理学の見識を深められてこられました。
また、九州大学で博士号を取得された金子照基先生がその後大阪大学に着任された経緯もあり、本学との少なからぬ縁があるとの自己紹介から始まった本講義は、「学校の組織論的考察」「学校組織と教育効果」「学校組織開発の実践」「学校組織開発研究の後期研究」「学校組織研究の実践展開」のテーマから成り、テイラーの科学的管理法に関する古典的な組織論の紹介から、学校組織の特質として個業化に関する問題やこれまで佐古先生が取り組まれてきた学校組織開発を通じた実践的研究に関する知見の紹介、あるいはその方法論についての解説が展開されました。
特に、学校組織はその生存戦略として個業化してきた経緯があること、すなわち教育という不確定性の高い職務に従事する教師は他の教師の仕事への干渉を控えることで組織を維持してきたこと、そして、こうした傾向が時に学校経営上の目標を設定し、内発的な改善を発現していく上での阻害要因になっているといった学校組織への見立ては、先生が組織開発を通じて教職員との密接な関りをもつ研究スタイルを採用してきたからこそ確立された独自の視点であり、そこに実践研究の強みを感じる時間にもなりました。
今回の集中講義も、12名の参加者がそれぞれに学びを深める時間となりましたが、ストレートマスター・ドクターだけでなく、社会人院生や留学生など多様な背景を有する構成員によって、様々な視点から質疑がなされ、学校組織の成り立ちについて広く深く咀嚼してゆく時間になったように思います。
私自身、これまでの研究のなかで、教育経営学で概念化されてきた「学校の自律性」をどう取り扱うか苦慮してきましたが、「学校が自己決定しうるかどうかの程度」といった捉えや、学校の目標設定と密接にかかわる「内発的改善力」といった概念を用いて「学校の自律性」と区別して組織現象を抑える視点を学び取るなかで、今後の研究デザインに関する示唆を大いに得ることができたように思います。今回の講義を糧に、研究を進めていきたいと思います。
最後になりますが、今回の講義後にメールでのやり取りを通じて先生からいただいたメッセージを紹介したいと思います。
「教育経営研究は,実践志向を意識せざるを得ない学問領域であると考えておりますが,その中においていかに学術性を追求し,研究としての成立を図っていくかが求められているのだと思います。研究者が安易な実践志向に陥ることなく,しかし教育経営実践の実態とあるべき姿をとらえながら,仕事をしていくことが必要なのではないかと思っています。今後の研究のご進展を期待しております。」
※1:三隅先生は、クルト・レヴィンによって創始されたグループ・ダイナミックス(集団力学)を日本に紹介したことや、リーダーシップをパフォーマンスとメンテナンスの2つの機能の複合として捉えるPM理論で世界的に著名
(文責:木村 栞太)