第8回九州大学教育学部・公州大学校師範大学 教育研究国際フォーラム 開催

2019年9月20日~22日、九州大学伊都キャンパスにおいて「第8回九州大学教育学部・公州大学校師範大学教育研究国際フォーラム」が行われました。去年の九大側による公州大訪問に続き、今回は公州大学校から8名の先生方、6名の大学院生の方々が訪問され、九大の新しいキャンパスでは初開催となりました。

2012年度から始まった本フォーラムは日韓両国の学術交流実施だけではなく、言語や文化の壁を超えた両大学の教員・院生間の交流を活性化させてきました。本年度は「教育学研究の学際性と固有性をさぐる」というテーマで、教育学部門、人間科学部門、都市・建築学部門、教育システム専攻、空間システム専攻、行動システム専攻など、人間環境学研究院、人間環境学府の教員及び院生たちからの発表が行われ、まさに学際的な国際フォーラムを実施することができました。

当日は、尾崎研究院長からの祝辞とイ・ダル公州大学校教授からの挨拶をいただき、交流の記念に、両大学間の記念品贈呈が行われました。九州大学からは今後の末永い「誠信交隣」の思いが込められた津屋崎人形を公州大学校の方々にお贈りしました。

フォーラムでは教員によるプレゼンテーション発表と院生によるポスター発表が行われ、まとめとして質問による総合討論、それから総括の順に実施されました。お昼休みの時間にはイーストゾーンの展望台にも上り、新キャンパスの味を満喫していただきました。

朝9時から午後6時までのタイトなスケジュールでしたが、幅広い領域からの興味深い発表を次々とお聞きすることができました。

公州大学校からはイ・ダル教授(教育史専攻)、キム・フンホ助教授(教育行政専攻)、イン・ヒョヨン助教授(相談心理専攻)より「薩摩郷中教育の基本精神について」、「大学専任教員の新規任用における所要期間の変化と影響要因の分析」、「美術活動を通じた集団相談が結婚移住女性に及ぼす影響」というテーマで発表していただきました。また、院生のホン・ユンテク氏(教育史哲学専攻)、イ・ギュフン氏(平生教育専攻)、シン・ウォンギュ氏、イ・ソンウォン氏(教育行政/教育測定・評価専攻)の4名より、それぞれ「M.J.Adlerの読書教育論に関する研究」、「地域平生教育専任機構の従事者の相対的職務重要度分析」、「韓国と日本の教師の自己効力感に関する比較分析-OECD国際教授-学習調査(TALIS)の結果を中心に-」というテーマで発表してもらいました。

そして九州大学からは吉本圭一(教育学部門・主幹教授)先生をはじめ、伊藤崇達(人間科学部門・准教授)先生、住吉大輔(都市建築学部門・准教授)先生が「第三段階教育と社会との往還的接続~東アジアの学歴社会の行方~」、「自己調整学習理論に基づく学習動機づけ研究」、「省エネルギー教育教材の開発」というテーマでプレゼンテーション発表をなされ、また院生の野口雄太氏(都市共生システム専攻)、小林昇光氏(教育システム専攻)、ソンユビン氏(行動システム専攻)、木村栞太氏(教育システム専攻)の4名から「「移動する被災者」を支える学校避難所と自主避難所の役割-熊本地震における西原村の事例検討から-」、「福岡県春日市における教育ガバナンスの特質-学校運営協議会における「行政委員」を中心に-」、「韓国語話者と日本語話者の言語音声の知覚に関する実験心理学的検討-より良く伝わる発音を目指して-」、「予算運用に関する学校への権限委譲-提案型学校予算制度の導入事例の検討を通して-」というテーマで各自ポスター発表をしてもらいました。

今年のフォーラムでは教育(学)に対する複合的で多様な問題意識と関心を共有することができました。東アジアの学力主義や格差社会、多文化教育、教育行政と学校現場との関係、中央政府と地域間に生じている教育実践をめぐる齟齬や葛藤など、各自の研究は幅広い問題関心に基づいたものでしたが、特に「教育実践」を対象とする研究とは何か、それにどのように向き合っていくべきか、などを考えられる意義深い時間でした。これは、日本・韓国という国籍を超えて、「教育」を対象に研究している研究者たち同士で学び合うべき問題でもあり、そのような意味で、本フォーラムはただ一日だけの国際イベントではなく、真の「研究交流」の場であることを改めて感じました。

フォーラム以外にも初日には、春日市教育委員会からのご協力を得て、春日市立日の出小学校に訪問し、春日市が推進しているコミュニティースクールを事例として学校と地域社会の連携活動に関する視察見学を行いました。春日市教育委員会・地域教育課の担当者より、春日市の教育改革についてプレゼンテーションを中心に具体的な事業内容、実践例を見せていただき、行政と自治会との関係変化、地域住民による学校教育改革の現状を説明していただきました。近年、韓国でも学校と地域の関係が問われており、春日市の先進事例に対する関心も高く、その後に行われた質疑応答の時間でもたくさんの意見と質問が出され、両国の教育現状における共通点と違いを理解しあうことができました。

初日の歓迎会では黒木学部長より歓迎のお言葉をいただくとともに両大学の深く長い関係を改めて感じました。また、フォーラムの後に行われた懇親会では、お互いに言語は違っても、同じ関心ごとや話題を通じて、学部生と院生たちを中心に活発な異文化交流が行われ、とても楽しい時間を過ごしました。

本フォーラムのため、福岡までお越しいただいた公州大学校の方々に感謝いたします。また、九州大学の先生方々と、事前準備も含め、フォーラムのために熱心に活動してくださった院生・学部生の皆様にも感謝いたします。「玄界灘の友」を合言葉に、本フォーラムが末永く続いていくことを心より祈ります。

(文責:鄭修娟)

更新日:2019-10-30 16:01

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